築年数が経っている一軒家の課題として筆頭に上がってくるのは、「冬が寒い」ということではないでしょうか。我が家も築30年の一軒家なのですが、断熱をDIYで行ったところ、体感でも温かいと感じられるほどの変化が生まれました。そのポイントは「開口部」すなわち「窓」です。今回は内窓のDIYを通じて温かさを獲得するための方法をお伝えします。
断熱においてなぜ「窓」が大切なのか
熱の流入・流出は開口部からが半分以上
断熱は家の根幹に関わる部分ですが、建て替えをせずとも温かさを得ることはある程度できます。まずはそもそもどこから熱が逃げているのか知る必要があります。下図のように、実は熱が逃げていく(入ってくる)のは大部分が開口部(窓)からです。つまり、窓の断熱をすればかなり熱の移動を防げることがわかります。
窓の問題は二種類あります。
一つはガラス自体の断熱性能で、一枚ガラス(単板ガラス)は熱をよく通します。二枚のガラスと、間に空気の層を持たせたペアガラス(複層ガラス)を採用することで大幅に断熱性能が向上します。
そしてもう一つはサッシです。旧来のアルミサッシはアルミの熱伝導率が非常に高いため冷気の侵入に一役買ってしまっています。冬にサッシを触るとキンキンに冷えていることからもわかると思います。これは、樹脂サッシを採用することで解決できます。
では実際にどの程度単板ガラスと複層ガラスで断熱性能が違うかというと、以下のように、2~3倍です。Low-Eと呼ばれる、複層の中でも高性能のガラスが存在します。
ではこの断熱性能の違いが実際に室温にどのくらい影響するのかというと、以下のグラフを見ると、外気温度が0~5度になる冬場の想定で、朝起きたときの室温に3度くらいの違いが生まれるということがわかります。実験の前提条件は図のリンク先をご覧ください。
一方で他の部分も割合として大きくないとはいえ、熱の移動は起こっています。家の工法によってもこのあたりの違いは出てきますが、我が家の場合は日本古来の在来工法ではなく、ツーバイフォーというパネル工法のため、築年数の割にもともとの断熱性能がそこまで悪くなかったということは付け加えておきます。築50年ほど経っており、壁がそもそも薄く断熱材もまともに入っていない家ですと、窓の断熱をするよりも建て替えを考えたほうがいいかもしれません。
屋根と天井は効果の割にコストがかかる
今回内窓のDIYを行うにあたっては、他の断熱対策、具体的に天井と床下の断熱も検討しました。しかし結論から言うとコストの関係で断念しました。
床下や天井の断熱は、断熱材を施工することによって行うのですが、流石にDIYでは難しいだろうと思い、 見積もりを取ったのですが、それぞれ50万円ほどかかるようでした。合計で100万円です。
- 天井:アクアフォーム、厚み175㎜、施⼯⾯積105㎡⇨50万円
- 床下:アクアフォーム、厚み85㎜、施⼯⾯積75㎡(床下養生あり)⇨50万円
もっとも、20枚ほどある家中の窓をすべて内窓施工すると100万円ほどの見積もりが出てきたので、内窓のDIYは安くできるというわけではありません。費用対効果として内窓施工に対して天井や床下の断熱は劣るということです。
ただ、Youtubeを見ていると床下断熱もDIYでできなくもなさそうなのではあり、気合が入ればやりたいと思っているのですが、内窓を施工した段階で十分な温かさを感じられており、現在のところその必要性は感じていない状況です。
内窓のDIYが現実的な理由
窓の交換・カバー工法・内窓の比較
さて開口部が熱の出入りが大きいことはわかりましたが、なぜ内窓なのでしょうか。これは窓の交換があまりに高いからに他なりません。
- 窓の交換:20万
- カバー工法(サッシは残し、上からカバーを被せるようにして新たなサッシを設置):10万
- 内窓設置:5万(DIYなら施工費がなくなるため、3万)
窓の交換は壁自体も一部補修が入るためこのような金額になってくるのですが、その課題を解決すべくサッシは残して上から断熱性の高い樹脂カバーで覆う形で断熱窓に交換するカバー工法が生まれたものの、それでも金額としてかなり高いというのが実態です。かつカバー工法の場合既存サッシの内側に更にサッシが追加されるために既存の窓よりもガラス分の面積が小さくなります。
その点内窓は既存の窓の内側に新たな窓を設置するため、施工も簡単で費用も安く済みます。問題は二重窓になってしまうため、よく使用する窓の場合は面倒になるということです。また二重窓というのは見栄えも悪そうなものですが、ここは良い意味で裏切られ、むしろ既存の窓よりも見栄えが改善しました。後ほど写真も出てきます。
開口部の断熱化は、断熱効果以外に、結露の防止効果もあります。ただし、内窓設置の場合は、内窓と既存の窓の間、つまり既存の窓の結露は完全には防止できていません。それでも、内窓設置前は窓が水浸しになっていたのが、内窓の部屋側には一切結露がなく、既存窓にうっすら結露というレベルに落ちたので及第点です。
どの部屋、どの窓を施工対象とするか
相対的に最も安い選択肢の内窓ですが、それでもひと窓につき、大きさや種類によりますが、DIYでも2〜6万円ほどのコストがかかります。そのため無邪気に家中の窓を断熱化しようというわけにもいきません。我が家では以下のように優先順位を決めました。
- ベビールーム:乳幼児のいる環境は温度湿度を適した状態に管理する必要があるため、一日中エアコンをつけている関係上最も優先度が上がりました。内窓施工後は、エアコンの稼働が落ち、結果として湿度も下がりにくくなり加湿器の稼働も落ちるという良い循環になりました。
- 浴室:冬場は浴室が非常に寒かったのですが、浴室の窓に内窓をつけたところ劇的に暖かくなりました。一人目はそれでも最初寒いですが、すぐにシャワー、湯船の熱気で空間が温まりますし、二人目は温かい状態で入れます。浴室暖房もいらなくなりました。
- リビング:家族が集まり、滞在時間も長い空間
- 脱衣所:脱衣中は防御力が落ちるものの、暖房空間に無いため寒く優先度が上がりました
また、内窓設置は、よく開け閉めする窓については利便性が落ちるデメリットが避けられません。特に庭やベランダと通ずる掃き出し窓の場合は採用が悩ましいところです。我が家では、ベランダへ通ずる掃き出し窓については、あまりベランダに出ることも無いことを踏まえて内窓にしてしまいました。洗濯乾燥機を導入していたためにベランダをほとんど使用していなかったためです。
内窓をDIYで設置した場合と、業者に委託した場合の比較
さて窓の施工が果たしてDIYでできるのでしょうか?そもそも業者にお願いした場合とどれだけ価格差があるのか比較したいと思います。二社見積もりを取ったときの金額と、楽天で調達した場合の金額差が以下のとおりです。
窓のみ購入/楽天 | 業者A | 業者B | |
引き違い窓, 幅700mm, 高さ1000mm | ¥22,744 | ¥44,564 | ¥46,782 |
引き違い窓, 幅1600mm, 高さ1800mm | ¥52,380 | ¥112,894 | ¥99,032 |
大きさにより金額は変動しますが、概ね2倍ほどの差があります。施工費が含まれるため当然なのですが、ここには2点注意点がございます。
- 自前調達の金額には送料が含まれていない。送料は最寄りの西濃運輸営業所まで取りに行くと無料、自宅まで配送を依頼すると6,000円ほどかかります。車があれば、取りに行くのがおすすめです。小窓であれば軽自動車でもなんとか運べましたが、掃き出し窓のサイズはおすすめしません。送料については、10枚くらい頼んでも固定金額でしたので、一気に大量注文して配送をお願いするのも良いです。
- 「こどもみらい住宅支援事業」という国土交通省の補助金制度があり、窓のサイズにより、14,000〜21,000円の補助金が出ます。これを含めてもDIYのほうが安いのですが、差は縮まるので補助金適用前提に業者に委託するのも良いです。
※DIYの場合は適用されません。
私の場合はまずテストで小窓に内窓を設置してみたのですが、そのときは自家用車で運びました。その後設置範囲を決めて一気に発注したときは、自宅までの配送をしてもらいました。
また、我が家の内窓はジャロジーの窓が多く、特殊な施工方法(後述)を編みだす必要があったため業者に頼めなかったこともあり、DIYをやりました。
DIYでも十分可能な内窓
内窓の種類の違いと使い分け
内窓と一言で言っても実は色んな種類の窓が存在します。一般的な窓は引違い窓と呼ばれるものですが、窓ごと外すタイプで一枚物のFIX窓、内開き窓、ドアタイプの開き窓テラスなどもあり、用途に応じて選択することが可能です。
以下に私の選定基準を列挙します。
開き窓テラス
勝手口のドアの前に設置する用です。このドア型が採用されるのケースは他には考えにくいでしょう。我が家では勝手口のドアは全面アルミでできており、リビングへの冷気の侵入元となっていたためこれで遮断しました。
FIX窓
開ける必要が無い光を取り込む目的の窓にはFIX窓は最適です。開けられないことは無いのですが、窓ごと開ける必要があり勝手が悪いため、ほぼ開ける気の無い窓以外はおすすめしません。この窓のメリットは、シンプルで見栄えがスッキリすることと、必要な幅が狭いため、内窓設置のスペースが小さくても設置できることです。メーカーごとの窓の種類と必要幅は後述します。
内開き窓
内開き窓は、下図のように横幅が狭く引き違い戸を採用しにくい場面でも設置が可能です。内開きのため、手前に窓が動ける空間が必要な点注意が必要です。またFIX窓同様に内窓設置のスペースが小さくても設置できる点がメリットです。
引き違い窓
最後に定番の引き違い窓です。基本はこれで良いと思うので、上記該当しない箇所はこちらで良いかと思います。
ガラスの種類
内窓をつけた時点で、既存のガラスと合わせて二重ガラスにはなるのですが、内窓を複層ガラスにすることで三重以上になります。内窓を単板ではなく複層にした場合の効果は以下のように大きく、複層以上がおすすめです。Low-Eにまでするかは悩ましいところですが、例えば北側で特に結露が激しい窓や、エアコンの稼働率が高い部屋などは良いと思います。
またLow-Eには遮熱タイプと遮熱タイプがあり、選択が可能です。私の場合は暑さ対策よりも冬の寒さ対策がメインで、光はむしろ冬場に取り入れたくもあり、遮熱タイプはどこにも採用しませんでした。遮熱はカーテンでやろうという考えです。
また窓の透過性も選択肢があります。基本は透明ガラスで良いと思うのですが、既存の窓がジャロジーのお風呂や脱衣所はすり板ガラスにしました。
プラマード(YKKAP)とインプラス(LIXIL)の使い分け
内窓を作っている代表的なメーカーがYKKAPとLIXILです。それぞれ、プラマード、インプラスという名前で商品を出しています。そのため、楽天で調べれば容易にヒットしますので、あとはサイズを入れれば窓それぞれに合った形でオーダーが可能です。
この両者違いは細かいところでありますが、特定の条件下ではどちらかを選ぶほうが良い場合がありますので、こちらを解説します。どちらでも良い場合は、安い方を選んでいました。引き違い窓はプラマードの方が安かったです。
枠の色
白を選択する場合、純白に近いのがプラマード、アイボリーに近いのがインプラスのため、白を選ぶ場合は注意が必要です。
取り付け幅:窓台寸法
内窓を設置するスペースとして、奥行きが必要なのですが、この奥行き分を窓台寸法と言います。この寸法が絶妙にインプラスとプラマードに違いがあり、内開き窓はインプラスの方が20mmも少なくて済むため狭いスペースで設置しやすいです。私は内開き窓だけはインプラスを採用しました。
インプラス | プラマード | |
引違い | 70 | 73 |
内開き | 55 | 73 |
FIX | 55 | 53 |
テラスドア | 55 | 73 |
なお、この寸法が各窓の必要寸法に満たない場合ふかし枠という出っ張りを設ける必要が出てきます。私は内窓が部屋側に出っ張るのは許容できなかったのですが、なんとか最小55mmのスペースは確保できたためふかし枠はつけずに施工できました。
内窓DIYの肝「採寸」から発注まで
採寸
内窓DIYにおいて失敗しないための重要なポイントが「採寸」です。そしてこれはレーザー距離計があると簡単に高精度に行うことができます。私が買ったのは以下の距離計ですが、現在在庫切れになってしまっていますが、2500円ほどでした。安い商品を選択して問題ないかと思います。メジャーで図るより断然おすすめです。
基本的には、幅と高さを図ってピッタリの内窓をオーダーします。幅、高さともに何点か測定し、最も狭いところでサイズを決めます。
商品の選び方
インプラス、プラマード共通ですが、下表のようにサイズに幅をもたせた形で商品が分かれています。そのため適切な商品を選択する必要があります。
複層ガラス | 幅 W [mm] | ||||
550~1000 | 1001~1500 | 1501~2000 | 2001~3000 | ||
高さ H [mm] | 250~800 | 商品あり | 商品あり | 商品あり | – |
801~1200 | 商品あり | 商品あり | 商品あり | – | |
1201~1400 | 商品あり | 商品あり | 商品あり | – | |
1401~1800 | 商品あり | 商品あり | 商品あり | – | |
1801~2200 | 商品あり | 商品あり | 商品あり | – | |
2201~2450 | – | – | – | – |
楽天で検索すると様々な幅・高さの商品が出てくるため非常に見にくいです。しかも様々なショップがあります。ですが一つページに入ると、ページ下方にサイズラインナップを表す上記のような表が出てくるため、こちらを選択しながら適切なサイズの内窓を選ぶことがおすすめです。
さて、今回はDIYで内窓を設置する方法を解説してきました。DIY前提で書きましたが、補助金を使って業者に委託してしまう、というのもいいと思います。
実際の施工の動画はYoutubeにたくさん出ているので、見てみてください。
窓際からの冷気の侵入が抑制されると、窓際にいても寒く感じなくなりますし、光熱費の削減にも繋がります。10年20年と済むならばぜひ内窓設置をおすすめします。
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